RNA実験の準備とRNase対策 その2

前回のエントリーでは、RNaseのコンタミ防止において、RNA実験用の環境のセットアップとRNase汚染源への対策が重要であることを述べ、前者の具体的な方法について解説しました。
そこで、今回のエントリーでは後者を取り上げます。

・RNaseの汚染源への対策

ラボにおけるRNaseの主要な汚染源は人間であり、結局のところ実験者およびその周囲由来のRNaseのコンタミを防ぐことが対策となります。
ご存知のように、唾液や汗、鼻水などには病原体に対する生体防御等のためにRNaseが含まれています。こうした実験者由来のRNaseのコンタミを防ぐには、実験やその準備の際に、以下の装備を着用することが必要になります。

1. マスク
2. 手袋
3. 長袖の上着(白衣)
4. ゴーグル(必要に応じて)


おそらく、これらに関しては、皆さん既に実行されていると思いますが、以下で少し補足しておきたいと思います。


<補足>

実験用の手袋にはラテックスやニトリル、ポリエチレンなど様々な素材のものがあります。簡単な試薬調整の際にはポリエチレンやポリプロピレン製の手袋で構いませんが、実験時には手にぴったりとフィットするラテックスやニトリル製の手袋を使用したいものです。新品の手袋の表面がRNaseで汚染されている可能性はかなり低いと思いますが、気になるようでしたらRNase-OFFなどの除去剤を使用して洗浄すると良いでしょう。(このような洗浄は一般的には不要ですが...)
ちなみに私は、かつてラボの予算が緊迫した時に、一度使った手袋をRNase-OFFで洗浄して再利用していました(笑)。

長袖の上着に関しては、普段使用している実験用の白衣で構いませんが、できればRNA実験専用のものを用意したいものです。白衣そのものは決して高い物ではありませんし、3~4千円程度の出費で、よりクリーンな状態でしかも気分良く実験に臨めるならば安いと思うのですが、いかかでしょうか?

なお、手袋や長袖の着用はRNase対策だけでなく、RNA実験で頻用される危険な試薬(DEPCやグアニジンイソチオシアネートなどの強力なタンパク質変性剤)から自分の身を守るという意義もありますので、必ず着用してください。

最後にマスクについてですが、一人で実験する場合(つまり、会話しない場合)は、マスクの着用は不要かもしれません。しかし、実験の肝心な場面で不意に鼻がムズムズしてきて、、、「ハックショーン!!」なんてことも起こりますので、やはりマスクの着用は重要です。
また、周囲に対して、今自分はRNA実験をやってるから、近づいたり話しかけたりしないでね的なシグナルにもなります。
このエントリーをはてなブックマークに追加

はじめに

RNAはDNAに比べて、ずっと分解されやすい物質です。そのため、RNAを扱う実験では、RNAの分解を防ぐためにDNA実験にはない試薬や操作が必要になってきます。RNAが分解される主たる原因はRNaseのコンタミであり、最も避けなければなりませんが、RNaseに関しては、分子生物学実験の初心者の方でも、その恐ろしさ(迷信的なものも含めて)を見聞きしたことがあるでしょう。
RNaseはいたるところに存在し、しかも極めて安定(=失活しにくい)とくれば、確かに恐ろしく聞こえます。しかし、きちんとした知識を持ち、適切な対策を実行すれば、RNaseを恐れる必要など全くありません。

とはいえ、RNA実験の基本について、RNase対策の具体的な方法を含めて初心者でもわかるように解説してある実験書は案外少ないものです。そのため、RNA実験を始めようとした時に、必要な知識がなかなか得られずに苦労した人も多いのではないでしょうか。
また、一応のやり方は身につけても、いまだに「本当にこれでいいのだろうか?」と、漠然とした不安を抱えながら実験している人もいるかもしれません。そこで、そんなRNA実験初心者のために、RNA実験の基本について、ゼロから丁寧に解説していきたいと思います。

RNA実験の準備とRNase対策 その1


RNA実験を成功させる上で、最も重要なことのひとつは、サンプルのRNAを分解から防ぐことです。当たり前のことですが、これ無くしてはどんなRNA実験も上手く行きません。特にRNA分解の主たる原因であるRNaseへの対策は、RNA実験の準備から実験の完了まで、常について回ります。ですから、RNA実験の準備をするにあたっては、RNase対策について十分に知っておく必要があります。ここでは、RNaseへの対策について解説しながら、RNAを用いた実験を始めるための準備についてレクチャーしていきたいと思います。


さて、そもそもどうすればサンプルのRNAはRNaseに分解されずにすむのでしょうか?
これを考えてみると、
サンプル中にRNaseが存在しない(=コンタミさせない)か、存在していても活性が無ければ(=失活している)良いことがわかります。


これがRNaseコンタミ対策における考え方の基本になります。


まずはじめに、RNaseをいかにコンタミさせないかということについて、解説していきたいと思います。


①RNaseのコンタミ防止

RNaseのコンタミ防止については次の2点が重要となってきます。
・RNA実験用の環境のセットアップ
・RNaseの汚染源への対策


・RNaseがコンタミしにくい実験環境のセットアップ


step 1. 実験台(ベンチ)の選定
→ 空気の動きが少ない場所にあるベンチを選ぶ。


これは、空気中を舞う細菌やRNase(人の咳や汗などに由来する)のコンタミを防ぐためです。
具体的には、ドアや窓、換気扇、通路などの近くにあるベンチは避けます。さらに、ビニールカーテン等でベンチの周りを囲むとより効果的ですが、無くても実験はできます。(注)


注)RNA実験と一口に言っても、実に様々な実験があり、実験ごとに要求される実験環境のクリーンさ(RNaseの少なさ)のレベルは異なります。今回紹介する方法は、一般的なRNA抽出や逆転写反応などの実験に対応するレベルです。


step 2. ベンチのクリーンアップ
ベンチを確保したら、次はベンチやその周辺のクリーンアップです。ここでは、ベンチと実験中に触れるもの(実験器具など)に対して、RNaseの除去作業を行います。コツは、実際に実験する時に触れるであろうものを想定しながらクリーンアップの対象を決定することです。
RNaseを除去する方法としては、市販のRNase除去剤を利用するのが手軽です。TaKaRa BioのRNase-OFFやAmbionのRNAZapなどが代表的です。ちなみに、これらのRNase除去剤はSDSを主成分としているようです。
続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加

なんの因果か、このブログへたどりついた皆さまへ、


あらゆる情報伝達手段が発達した今日においても、必要な情報が容易に手に入るとは限りません。特に生命科学研究に関する有用な情報というものは意外に少ないものです。
そこで、少しでも役に立つ情報を発信できないかとの想いから、このブログを開設することにしました。
実験プロトコールからキャリアパス、科学ニュースなど様々なカテゴリについて綴っていきたいと思います。

なお、管理人は多忙な(怠惰な?)ため、更新は不定期となってしまいますが、電気泳動の待ち時間にでも覗きに来てください。


私の知識と経験が少しでも皆さまのお役に立つことを祈って





このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ