カテゴリ: 学習

先日、本を整理していたら大学時代に使っていた懐かしい本がいくつか発掘されたのですが、そのうちの一冊を紹介しようと思います。

「知りたいことがすぐわかる 数・式・記号の英語」
鵜沼 仁 著


いくら数学と縁の薄い実験生物学であっても(それで本当にいいのか、という議論はあるでしょうが)、ちょっとした統計学や簡単な数式はそれなりに使うでしょう。それ自体を使いこなすことについては問題が無いとして、いざ外国人に自分の研究を説明する段になると、英語できちんと表現できていますか?
また、形態について説明するときに使う簡単な幾何学の用語であったり、グラフについて説明する際の基本用語や定型表現は大丈夫ですか?

案外、この手の英語表現は研究者にとって重要でありながら、きちんと学ぶ機会がなかなかありません。学生時代の管理人は将来、海外で活躍することを妄想し、それに備えて本書で勉強したものでした(結局、学んだことを活かす機会に恵まれませんでしたが、笑)。

実験生物学屋さんなら、本書の半分も読めば十分でしょうし、理論生物学屋さんで複雑な数式を扱う方であれは、通読することで必要なことは学べるでしょう。

もし、算数あるいは数学の英語表現に自信の無いのであれば、おすすめできる一冊です。
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今回のエントリーでは、最近管理人がお気に入りのiOSアプリを紹介したいと思います。

コールド・スプリング・ハーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratory,以下、CSHL)といえば、ジェームズ・ワトソンが長年に渡り所長を務めていた、ニューヨーク州ロングアイランドにある世界的に有名な分子生物学の研究所です。
この研究所の出版会は、Genes & Developmentといった有名ジャーナルをはじめとして、世界的なラボ・マニュアルであるMolecular Cloningやラボでの処世術を説いて大きな話題となったAt the Benchなど有用かつユニークな出版物で知られています。

このように研究成果の発信や教育に力を入れてきたCSHLが出したiOSアプリが、ヒト脳の三次元構造を表示する3D Brainです。このアプリでは、脳の各部位を立体的に表示するだけでなく、画面をタッチすることで上下、左右に動かすことができます。
脳科学や神経生物学以外の研究者の方は、あまり興味を持たれないかもしれませんが、一般教養として自分の頭の中身について知っておくのも悪くはないでしょう。また、美しいグラフィックをグリグリ動かすだけでも、結構面白いですよ。
嬉しいことに無料なので、まずはダウンロードしてみてはいかがでしょうか。

なお、現時点では英語版だけですが、脳の各部位の英名を覚えるのにも使えると思います。
将来的には、脳だけでなく人体や細胞のアプリも出ると嬉しいですね。

【操作法】

まずは、右上のStructureをタップします。
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次に、見たい部位を選択します。
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ここでは、Ventricles(脳室)を選択しました。
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上下、左右に動かすことができます。
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前回のエントリーでは、中高生の研究論文を専門に掲載するジャーナル、Journal of Emerging Investigatorsの創刊をお伝えしましが、タイムリーなことにグーグル主催の科学コンテスト、Google Science Fair 2012のエントリーが始まったので、ここで紹介したいと思います。

今年で2回目となるこのGoogle Science Fair(以下、GSF)は、13-18歳であれば誰でも参加できる科学コンテストで、第1回となった昨年は91カ国から1万人を超える学生がエントリーしました。
このコンテストにはナショナル・ジオグラフィックやLEGO, サイエンティフィック・アメリカンなどのスポンサーがついており、優秀者にはスポンサーから賞金や様々な特典が与えられます。

GSFの特徴
1. ウェブをフル活用
この科学コンテストはグーグルが主催するだけあって、エントリーからプレゼン、選考までがウェブをフル活用して行われるのが特徴です。例えば、エントリーの際に、プレゼンの概要を動画かスライドで提出する必要があり、前者はYoutubeに2分間の動画をアップ、後者はGoogleドキュメントのプレゼンテーションアプリを使ってスライドを作成、提出しなければなりません。(これについては、自社サービスのユーザーを増やそうとするしたたかさを感じますね)

2.豊富な支援コンテンツ
GSFのウェブサイトで特に目をひくのが、豊富な支援コンテンツ群です。コンテストに参加する学生は勿論、教師用の支援コンテンツまで豊富に用意されています。
こうした支援コンテンツの充実ぶりは、数々のウェブサービスを手がけてきたグーグルならではと言えるでしょう。

3.厳しい規定
GSFでは実験に関する細かなガイドラインが設けられています。
特に生物関係のマテリアルの扱いについては厳しく、動物実験は原則禁止ですし、動物の採取や動物への介入・刺激なども禁止されています。ここでの動物とは脊椎動物だけでなく、あらゆる動物が対象ですから、例えば昆虫を採取して観察することもできません。つまり、遠くから観察することだけが許されています。
こうした厳格な規定は、欧米での動物実験に関する厳しいガイドラインや動物愛護の風潮などを考慮するとやむ得ないかもしれませんが、全ての動物を対象とする点については、やや過剰であり、可能性を制限しているようにも感じられます。

ツールとしてのGSF
GSFには単に世界規模の科学コンテストというだけでなく、他にも重要な機能があることを見逃してはなりません。それは、中高生が研究の進め方を学ぶツールとしての機能です。
GSFウェブサイトの以下のページを見ると、おわかりになるかと思いますが、様々な研究支援コンテンツやツールが提供されており、
http://www.google.com/intl/ja/events/sciencefair/requirements.html
http://www.google.com/intl/ja/events/sciencefair/site.html
http://www.google.com/intl/ja/events/sciencefair/judging.html#process

科学研究におけるプロセス、つまり、疑問から始まり、仮説、実験、データの解釈、そして結論へと至るプロセスを実践しながら学ぶことができます。
加えて、丁寧かつ明解な説明と使いやすさを備えており、誰でも容易に活用できる点も評価できます。こうした有用なツールが、GSF以外にもたくさん出てくることを期待したいものです。
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現在、ハーヴァード大学医学部の学生たちによって、ジュニア科学者(中高生)の科学論文を掲載するオープンアクセス・ジャーナルが立ち上げられようとしています。このジャーナルはJournal of Emerging Investigators(以下、JEI)といい、おそらく世界初の中高生専用の査読誌になる予定です(現在投稿を募集中)。

JEIは 中高生が研究の成果を発表できる場を提供するために創られたジャーナルで、
中高生は論文を発表することにより、

・査読を通じてフィードバックが得られる
・論文の発表を通じて、科学者や同好の学生とのコネクションを作れる
・大学の推薦書に記載できる


といった恩恵を受けられるとしています。

また、こうした研究発表の場をつくることで中高生の研究へのモチベーションが高まり、その結果、学生が協力して研究に取組む機会が増えることをJEIの運営チームは期待しているとのことです。

JEIは中高生が研究を行い、それを発表する行為そのものを奨励しており、研究のレベルについては最優先事項ではないとしています。とはいえ、
少し前に茨城の高校生が新しい化学反応を発見し、専門誌に論文が載ったことが話題になりましたし、大手半導体メーカーIntel社がスポンサーを務める科学コンテスト、Intel Science Talent Searchでは、プロと遜色ないレベルの研究(の構想)が毎年発表されていますから、JEIについても質の高い論文が掲載される可能性はあるでしょう。
論文は世界中から投稿できるようなので、日本からの論文も期待したいものです。日本には多くのスーパーサイエンスハイスクールがあるのですから。

こうしたジャーナルの創刊は、中高生が研究成果を広める有効なツールを手に入れたことを意味します。それによって、アカデミアや企業の研究者との関係が生まれ、研究を発展させられる機会を得るかもしれません。また、重要な発見をした際に、容易にクレジットを認知させられるメリットもあるでしょう。将来、JEIの論文がプロの研究者から引用される日がくるかも知れません。
さらに、JEIの創刊により、中高生の研究レベルの向上だけでなく、理科教育に関わる教師の質向上も期待できそうです。というのも、JEIに論文を投稿するには教師かそれに準ずる指導者の存在が義務付けられているためです。実際のところ、教師がある程度は助力することになるでしょうから、研究の指導や論文の作成(補助)を通じて、教師のトレーニングになるはずです。

今後、どのような論文がこのJEIで発表されるのか、また、このジャーナルがどのような成長を遂げていくのか注目していきたいと思います。
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3回のエントリーに渡って、プレゼンテーションの技法とコツについて述べてきましたが、聴衆を惹きつけるプレゼンに必要なことはほぼ全てカバーしたと思います。
これだけでも十分なのですが、プレゼンをさらに良いものにするためのtipsを最後に紹介しておきましょう。


1. みっちり練習しよう
まず認識しておいて頂きたいのは、十分な練習無しに良いプレゼンはできないということです。プレゼンの達人と言われるスティーブ・ジョブズでさえ、プレゼンの前には毎回徹底的に練習すると言われています。また、管理人の知る限り、プレゼン上手と言われる有名研究者の多くもプレゼンの練習にそれなりの時間を割いています。

プレゼンの練習はできるだけ本番に近い状況で行うことが望ましいのですが、少なくとも以下の2点は必ず実行しましょう。

・時間を測りながら練習する。(発表時の時間感覚に慣れるため)
・他の人に練習を聴いてもらう。

特に二つ目の「他の人に練習を聴いてもらう」は非常に重要で、自分では気付かなかったことを他者から指摘してもらうことで、プレゼンをブラッシュアップすることができます(一種のpeer reviewとも言えるでしょう)。どうしても、聴いてもらえる人が見つからない場合は、せめて声を出して練習するようにしてください。これだけでもかなり違います。


2. 他の人のプレゼンから学ぼう
良いプレゼン、悪いプレゼンともに学ぶべきところがあります。良いと感じたプレゼンであれば、その良かった点を自分のプレゼンに積極的に導入しましょう。また、悪いと感じたプレゼンは反面教師として、自分がプレゼンする際に、同じことをしないように気をつけます。
これまでに管理人が書いてきた内容も、多くの有名・無名研究者のプレゼンを聴いてきた経験に基づいています。


3. バリアフリーに配慮

自分では見やすいスライドを作っているつもりでも、一部の人からは見づらいスライドになっているかもしれません。というのも、色覚障害の方には、特定の色使いが認識の妨げになり、蛍光顕微鏡などの画像データを上手く認識できない可能性があるためです。この問題に関しては、こちらに素晴らしいパワーポイントがありますので、ぜひご覧になってください。
http://jfly.iam.u-tokyo.ac.jp/html/manuals/pdf/color_blind_J.ppt
こちらも。
http://www.nig.ac.jp/color/


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