このエントリーではレーザーマイクロダイセクション(LMD)により得られた微小な組織からのRNA抽出について説明します。ここで紹介しているプロトコールはLMDのサンプルだけでなく、細胞量の少ないサンプルからのRNA抽出全般に適応可能です。なお、本プロトコールでは、QIAGEN RNeasy Micro Kitを使用しています。

QIAGEN RNeasy Micro Kitを用いたLMDサンプルからのRNA抽出

キットが届いたら、すぐに箱を開けて、スピンカラムを低温室のデシケーターに入れること。
また、DNase 1がキットの箱とは別に、低温に保たれて送られてくるので、到着次第、4℃で保存する。


<用意するもの>
2-Mercaptoethanol
フィルター付きティップ (RNase-free)
100 % EtOH
80 % EtOH (RNase-free)
70 % EtOH (RNase-free)

<準備等>
使用する分のBuffer RLTを別容器に分注し、2-MEを100分の1量加える。
2-MEを加えたRLTはR.T.で一ヶ月間は安定。

溶解のステップはRNA抽出のなかでも特に重要なポイントのひとつである。
細胞を十分に破砕し、RNAを可溶化しなくてならない。

抽出操作は、全て室温でおこなうこと。

1回のLMDサンプリング=1枚のスライドグラスから得られる細胞数は数百〜1,000程度と考えられる。よって、より多くのRNAを得るためには複数回のサンプリングが必要である。Buffer RLT中に溶解したサンプルは- 80 ℃で安定であるから、必要な細胞数が集まるまで、ストックしておける。

80 % EtOHの調整
50 mL のガラス製メスシリンダーをDEPCなどでRNase-free化しておく。
そのメスシリンダーを用いて、24 mLの100 % EtOHを6 mLのRNase-free water (キットに附属)に加える。

Buffer PREの調整
Buffer PREに4倍量の100 % EtOHを加える。

DNase 1の調整
キット附属のDNase1 に550 uLのRNase-free water (キットに付属)を加える。バイアルを開ける時はこぼさないように注意。混ぜる時はボルテックスを使わずに、インバートで。
溶かしたら、分注して-20 ℃で保存 (最長で9ヶ月間安定)。融解・再凍結は避け、一度溶かしたら、4℃で保存。(一ヶ月は安定)

Poly-A RNA stockの調整
キット付属のpoly-A RNAに1 mLのRNase-free waterを加える。分注して-20 ℃で保存。溶かしたRNAは一回で使い切ること。
stockの濃度は310 ng/uLであり、使用する時はまずBuffer RLTで100倍希釈する。その後、1.3 uL (4 ng)をサンプルへ加える。


LMDサンプルからのRNA抽出

・0.5 mL PCRチューブ(eppendolf)のフタに、2-ME添加済みのBuffer RLTを40 uL入れて、顕微鏡にセット。
・Buffer RLTに沈殿が生じていないか確かめる。沈殿があった場合は、温めて溶かす。
・LMDで組織を切り出す (以前のエントリーを参照)


<RNAの抽出>
氷を用意しておく

1. 4 ng のpoly-A RNAを加えたら、30 secボルテックスする。
carrier は標準プロトコールで20 ng
LMDのように一回のサンプリングでは、十分な量が確保できない場合は、ここで-80 ℃で保存。サンプルが必要量そろったら、解凍してまとめる。

2. Lysateと同量の70 % EtOHを加え、ピペッティングでよく混ぜる。

3. スピンカラムに2 mLのコレクションチューブを装着し、カラムにlysateをのせる。

4. フタをしてR.T. 12,000 rpmで、15 sec遠心。フロースルーを捨てる。コレクションチューブを再びカラムに装着する。

5. 350 uLのBuffer RW1をスピンカラムにのせ、フタを閉めてR.T. 12,000 rpmで15 sec遠心。フロースルーを捨てる。

6. DNase1 ストック10 uLをBuffer RDD 70 uLに加え、優しくピペッティング。
DNase 1は物理的刺激に弱いので、ボルテックスは厳禁。

7. DNase1溶液をカラムのメンブレンに直接アプライし、R.T.で15 minおく。

8. Buffer RW1を350 uLカラムにアプライし、遠心。フロースルーをコレクションチューブごと捨てる。

9. カラムに新しい2 mLコレクションチューブを装着し、Buffer RPEを500 uLアプライする。フタを閉めて、遠心→フロースルーを捨てる。

10. 500 uLの80 % EtOHをカラムにアプライし、フタを閉めたらR.T. 12,000 rpmで2 min遠心。フロースルーをコレクションチューブごと捨てる。

11. カラムを新しいコレクションチューブにセットする。カラムのフタを外した状態で遠心。(R.T. 14,000 rpmで5 min )
カラムのキャップを遠心力から守るために、キャップをローターの回転方向の逆向きになるようにセットする。フロースルーをコレクションチューブごと捨てる。

12. カラムを1.5 mLコレクションチューブ(キットに付属)にセットして、RNase-free waterを12 uLアプライする。

13. カラムのフタを閉めて、30 sec インキュベート。その後、R.T. 14,000 rpmで1 min遠心。

14. これをもう1度繰り返す。

15. 逆転写反応へ。
精製したRNAは、そのまますぐに逆転写反応に持ち込むこと。
freeze-thawは絶対に避ける。

<抽出したRNAの定量>

Bioanalyzer等を用いて定量。