このエントリーでは、レーザーマイクロダイセクションによる組織凍結切片の切り出しとRNA抽出のプロトコールをご紹介します。
本プロトコールのレーザーマイクロダイセクションでは、Leica MicrosystemsのAS LMD、また、RNA抽出にはQIAGEN RNeasy Micro Kitの使用を前提にしていますが、他のシステムでも適宜最適化することで適用可能と思われます。

未固定凍結標本の作製
・取り出した新鮮な組織をPBS-で洗い、O.C.T.コンパウンドで包埋。
・液体窒素で冷やしたイソペンタン中で凍結(イソペンタンがなければ、そのまま、液体窒素で凍結する)。
・ - 80度で保存。


未固定凍結標本の薄切と染色


準備

・染色ビンとスライドラック、LMD用フォイル付きスライドを180 ℃, 8 hr乾熱滅菌し、RNase-free化する。

・クライオスタットをRNase-free化する
1. RNase-OFF (Takara)をスプレーし、キムワイプでまんべんなく塗り広げる。
2. DEPC水をペーパータオルに含ませて、よく拭く。
刃と筆もRNase-free化しておく。
15 mLチューブにRNase-OFFを入れ、そこでブレードをソークする。次にDEPC水で2回すすぐ。

凍結サンプルを薄切する20~60 min前に、クライオスタット庫内に入れて、薄切時の庫内温度と凍結サンプルの温度を合わせておく。

乾熱によりRNase-freeにした染色バットへ固定液(EtOH : CH3COOH (19:1))、0.05 %トルイジンブルー、DEPC water (x3)それぞれを入れて、氷冷しておく。


クライオモールドから慎重に切片を取り外し、マウントする。
ポイント① 力が過度にかかると、OCTの内部に亀裂が入り、薄切したときに切片がちぎれてしまう。モールド越しに指で少し暖めると外れやすくなる。

ポイント② サンプルをクライオスタットにマウントする時は、少し左側にサンプルを付けると、切片をたくさんスライドグラスに貼れる。

ポイント③ マウントするときに、少しOCTをサンプルの手前側につけると、はけで切片を引っ張るときに便利である。→ つまみになる。

フォイル付きスライドグラスをクライオ庫内に入れて冷やす。

8 umの厚さで薄切する。

薄切したら、フォイルの面に切片を貼り付ける。貼り付けたら、裏側から指を当てて、4~5 sec待つ。これにより指の熱で、しっかりとフィルムに切片を付着する(ラテックスグローブ越しに微かに熱を加えるだけなので、RNAの分解は心配しなくてよい)。

EtOH : CH3COOH (19:1)で2.5 min固定。
クライオ庫内で固定液に入れ、それから染色バットをon ice。

DEPC waterで1 min洗浄(漬けておく)。on ice

0.05 %トルイジンブルーに15 sec漬けて、染色。

DEPC waterで30 sec洗浄。on ice

もう一度、別のDEPC waterで30 sec洗浄。on ice

水気を切って、LMDへ。
(ラックにスライドグラスをセットし、空の染色バットにいれて持ち運ぶとよい)