2012年09月

前々回までのエントリーで免疫蛍光染色のプロトコールを紹介しましたが、そのついでに、免染で使える一次抗体の探し方について書いておきましょう。

免染を成功させるには、何よりもまず一次抗体の性能が重要になります。しかし、免染で使える抗体を見つけるのは必ずしも容易ではありません。

市販の抗体は、ウェスタンブロットには使えても、免染には使えない抗体が多いですし、免染に使用できるとされていても、実際には染まらないハズレ抗体も少なくありません。また、抗体は3~5万円程度と高価ですから、何種類も試すことができないという問題もあります(超お金持ちラボなら別ですが)。
ですから、いかに高確率で免染に使える抗体を引き当てるかは、結構重要な問題だったりするわけです。
そこで、管理人があまりリッチでないラボにいた時に、編み出した方法をお教えしましょう。
そんなに大した方法ではありませんが、適当にカタログから選ぶよりはずっと確率のいい方法です。

この方法は、PCRのプロトコールの中で紹介した、使えるプライマーの探し方によく似ています。
つまり、Google Scholarの全文検索機能を利用して、論文で実績のある抗体を探しだすのです。

例えば、ヒトのAというタンパク質に対するウサギ由来の抗体で、免染に使えるものを見つけたい時は、

Google scholarで
rabbit AND anti-human A antibody AND immunofluorescence
と検索し、きれいに染色された図が載っている論文を探し、その論文のMaterials & Methodsに記載された抗体を使うのです。
複数の論文で実績があれば、免染で使える確率は高いと考えられます。

また、メーカーのカタログに載っている抗体(カタログ上は免染で使用可となっている)が、実際に免染に使えるかどうか確認したい場合は、メーカー名 AND クローン番号(モノクロ抗体の場合)AND immunofluorescence
などの語句で特定の抗体を検索し、きれいに染色できているか調べます。

実際、これらの方法で抗体を探してみると、きちんと染色できている抗体がなかなか見つからないことに気づくと思います。それくらい、免染で使用できる抗体というのは限られていることが多いのです。

こうして発見した抗体でも上手く染まらないことがあります。海外の抗体に多いのですが、日本に輸入する際に、温度の管理が徹底されておらす、抗体が失活してしまうことがあるためです。
さすがに具体名は書けませんが、某商社は温度管理が悪いという話はよく聞きました(同じメーカーの抗体でも別の会社が輸入したものは普通に使えるということが実際にありました)。商社の温度管理となると、一研究者レベルではどうにもならないことですが…
どうしても抗体が見つからない場合は、最終手段として抗体を自作するしかないわけですが、いい抗体がとれるかは神のみぞ知る…ということで果てしない抗体の探索と苦悩は続くのであります(笑)。
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学術論文のパブリッシング・モデルを常に改革してきたPLoS(Public Library of Science)から、またしても興味深い発表がありました。
低中所得国の科学振興と研究成果のグローバル発信のために、出版料金の値下げを実施するというものです。
これにより、低中所得国のうちグループ1として分類された80カ国は出版料金が無料グループ2の35カ国は出版料金が500ドルに値下げされました(ちなみに、PLoS ONEの出版料金は1,350ドル)。グループ2にはタイやインド、ウクライナなどそれなりにポテンシャルのある国も含まれています。

穿った見方をすれば、今後、論文投稿数が急激に増えていくであろう国々をいち早く取り込み、メガジャーナルとしての基盤を固める動きにも見ますが、PLoSは非営利的組織ですし、今まで通りの運営が維持されるならば、大きな研究者コミュニティにとって不利益は生じないと思われます。
もちろん、これまでのPLoSの活動を考慮すれば、今回の値下げも論文出版における障壁を減らし、よりオープンなジャーナルパブリッシングを目指すことが主たる目的であると言えるでしょう。

果して、商業出版社の類似ジャーナルがこの動きに追従するのか、今後の動向が気になります。
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