ここまで3回に渡って、細胞の免疫染色プロトコールを紹介してきました。
今回は、その続きとして免染の最終段階である細胞核の染色と封入について説明します。
⑥核の染色と封入
DNAに結合する蛍光色素(DAPI, 4',6-diamidino-2-phenylindoleなど)が添加してある封入剤を使用して核染色と封入を同時に行う方法と、核を染色した後に封入する方法があります。
方法1:核染色と封入を同時に行う方法
1. DAPI入りの市販封入剤*をスライドグラス(スライドグラスは予め70%エタノールとキムワイプを使って、表面をきれいにしておくこと)に1,2滴のせる。
* Vectashield H-1200やProlong Gold with DAPIなど。
2. ピンセット*を使ってディッシュからカバーグラスを取り出し、細胞が付着している面が封入剤に接するようにしてスライドグラスにのせる。
*ピンセットはDumont社のINOX No.5がお勧めです。
3. カバーグラスの上にキムワイプを乗せ、ごく軽く押す。はみ出した封入剤をキムワイプで吸い取ったら、ネイルポリッシュ(=マニキュア*)をカバーグラスの四辺に塗り、シールドする。
*100円ショップで売っている安物で十分です。
4. カバーグラスの上にMilliQ水(or Elix)を一滴のせて、キムワイプで軽く拭く(塩を取り除くため)。このとき、カバーグラスを押したり、ずらしたりしないように注意する。
5. 検鏡するまでアルミホイルをかぶせて遮光しておく。
方法2 :核染色してから封入する方法
1. 二次抗体の洗浄が終わったら、さらに細胞をTBS* でリンスする。
次に100 uLの0.2~1 ug / mL DAPI in TBS (DAPIの0.1 mg / mL in MilliQのストック溶液を使用直前にTBSで100~500倍希釈する) をカバーグラスにのせ、遮光しながら3分間静置。
*ここではPBSではなく必ずTBS(20mM Tris-HCl pH 7.5 150mM NaCl)を使用すること。
2. DAPI溶液を取り除き、0.1 % Triton X-100 in TBSを加え、5分間静置。その後、Tritonを含まないTBSで1回リンスする。
3. 20 mM Tris-HCl(pH 8.0~8.5) : グリセロール = 1:9で混合したものをスライドグラスに1,2滴のせ、そこへカバーグラスをかぶせ(細胞が乗っている面を下にする)、マニキュアでカバーグラスの四辺をシールドする。
4. カバーグラスの上にMilliQ水(or Elix)を一滴のせて、キムワイプで軽く拭く。(カバーグラス表面の塩を取り除くため)
5. 検鏡するまでアルミホイルをかぶせて遮光しておく。
このグリセロール溶液の封入剤は市販の封入剤に比べて蛍光色素が退色しやすいという欠点*がありますが、バックグラウンドがかなり低いという長所があります。また、市販の封入剤に比べて非常に安価です。自作の封入剤に抗光漂白作用のある化合物を添加するプロトコールもありますが、一般的に毒性の高い化合物であることが多いのであまりお薦めはしません。もちろん、グリセロール溶液の代わりに、蛍光色素を含まない市販の封入剤を使用してもよいでしょう。
なお、このグリセロールの封入剤は特にDAPIが退色しやすいのですが、核の撮影は露光時間が短いので実質的には支障になりません。また、Alexa-488など退色しにくい色素を結合した二次抗体を使えば、比較的長めの露光にも対応できます。
次回はAppendixとして、免染で使える一次抗体を効率良く探す方法を紹介したいと思います。
今回は、その続きとして免染の最終段階である細胞核の染色と封入について説明します。
⑥核の染色と封入
DNAに結合する蛍光色素(DAPI, 4',6-diamidino-2-phenylindoleなど)が添加してある封入剤を使用して核染色と封入を同時に行う方法と、核を染色した後に封入する方法があります。
方法1:核染色と封入を同時に行う方法
1. DAPI入りの市販封入剤*をスライドグラス(スライドグラスは予め70%エタノールとキムワイプを使って、表面をきれいにしておくこと)に1,2滴のせる。
* Vectashield H-1200やProlong Gold with DAPIなど。
2. ピンセット*を使ってディッシュからカバーグラスを取り出し、細胞が付着している面が封入剤に接するようにしてスライドグラスにのせる。
*ピンセットはDumont社のINOX No.5がお勧めです。
3. カバーグラスの上にキムワイプを乗せ、ごく軽く押す。はみ出した封入剤をキムワイプで吸い取ったら、ネイルポリッシュ(=マニキュア*)をカバーグラスの四辺に塗り、シールドする。
*100円ショップで売っている安物で十分です。
4. カバーグラスの上にMilliQ水(or Elix)を一滴のせて、キムワイプで軽く拭く(塩を取り除くため)。このとき、カバーグラスを押したり、ずらしたりしないように注意する。
5. 検鏡するまでアルミホイルをかぶせて遮光しておく。
方法2 :核染色してから封入する方法
1. 二次抗体の洗浄が終わったら、さらに細胞をTBS* でリンスする。
次に100 uLの0.2~1 ug / mL DAPI in TBS (DAPIの0.1 mg / mL in MilliQのストック溶液を使用直前にTBSで100~500倍希釈する) をカバーグラスにのせ、遮光しながら3分間静置。
*ここではPBSではなく必ずTBS(20mM Tris-HCl pH 7.5 150mM NaCl)を使用すること。
2. DAPI溶液を取り除き、0.1 % Triton X-100 in TBSを加え、5分間静置。その後、Tritonを含まないTBSで1回リンスする。
3. 20 mM Tris-HCl(pH 8.0~8.5) : グリセロール = 1:9で混合したものをスライドグラスに1,2滴のせ、そこへカバーグラスをかぶせ(細胞が乗っている面を下にする)、マニキュアでカバーグラスの四辺をシールドする。
4. カバーグラスの上にMilliQ水(or Elix)を一滴のせて、キムワイプで軽く拭く。(カバーグラス表面の塩を取り除くため)
5. 検鏡するまでアルミホイルをかぶせて遮光しておく。
このグリセロール溶液の封入剤は市販の封入剤に比べて蛍光色素が退色しやすいという欠点*がありますが、バックグラウンドがかなり低いという長所があります。また、市販の封入剤に比べて非常に安価です。自作の封入剤に抗光漂白作用のある化合物を添加するプロトコールもありますが、一般的に毒性の高い化合物であることが多いのであまりお薦めはしません。もちろん、グリセロール溶液の代わりに、蛍光色素を含まない市販の封入剤を使用してもよいでしょう。
なお、このグリセロールの封入剤は特にDAPIが退色しやすいのですが、核の撮影は露光時間が短いので実質的には支障になりません。また、Alexa-488など退色しにくい色素を結合した二次抗体を使えば、比較的長めの露光にも対応できます。
次回はAppendixとして、免染で使える一次抗体を効率良く探す方法を紹介したいと思います。