今回のエントリーから何回かに分けて、培養細胞の免疫蛍光染色のプロトコールを説明したいと思います。
まずは、培養細胞の免染の大まかな流れを以下に示しておきます。
免疫蛍光染色の過程
・免染用の細胞の準備↓
・細胞の固定↓
・細胞膜の透過処理 (メタノール固定では不要) ↓
・ブロッキング↓
・一次抗体反応↓
・洗浄↓
・二次抗体反応↓
・洗浄↓
・核の染色↓
・封入↓
・顕微鏡での観察
固定→ブロッキング→一次抗体反応→二次抗体反応→封入というプロセスは培養細胞に限らず、組織切片の免染等においても共通であり、免染プロトコールの骨格と言えます。また、ウェスタンブロット等の抗体を使用する他の実験にも過程が類似していることに気が付くでしょう。
免染の詳細なプロトコールを説明する前に、まずは、予備知識について解説します。
固定法について
<細胞の固定>
免染を始めるにあたり、まずは細胞を生きた状態に近いままで固定する必要があります。細胞の固定には何通りかの方法がありますが、それぞれ一長一短があるので、免染したいタンパク質の局在などに応じて、適切な固定法を選ぶ必要があります。固定法の選択は免染において重要なファクターであり、固定法の違いによって、得られるデータが大きく異なることも珍しくありません。そのため、固定法の検討は重要です。
ここでは、特にメジャーな2つの固定法を紹介します。また、参考となる論文がある場合は、Materials & Methodsを参照してみましょう。
・ホルムアルデヒド固定
一般的な固定法で、膜タンパク質の免染にも使用できます。メタノール固定に比べると固定に時間がかかりますが、その分、タンパク質の変性能力はマイルドで、構造が大きく変化しないと言われています。
・メタノール固定
細胞骨格(特に微小管)や比較的rigidなタンパク質の観察に適した方法です。可溶化能力が高く、細胞膜がその影響を受けるため、膜タンパク質の免染には基本的に使用できません。
細胞が短時間で変化する現象を免染で評価する場合においては、細胞を素早く固定できるメタノール固定の方が、現象の一瞬を捉える上でホルムアルデヒド固定よりも適している場合があります。
なお、それぞれの固定法のプロトコールは後ほど説明します。
細胞の準備
予め決めておくこと
・播種する細胞数はどれくらいか、また、播種してから何時間後に固定・染色するのか
→これらは免染時の細胞密度(観察のしやすさに影響)や細胞周期の時間、トランスフェクションした遺伝子の発現に必要な時間などを総合的に考慮した上で、何通りかのパターンを試し、最適化する必要があります。
・カバーグラスにコーティングは必要か
接着が弱い細胞を免染する際には、予めポリ−L−リジンなどでコーティングしたカバーグラスの上で細胞を培養する必要があります。コーティング剤にはポリ−L−リジンの他にコラーゲンやラミニンなどありますが、どれを使用するかは、ひとまずその細胞を使用している論文を参考にしましょう。
次回のエントリーでは、カバーグラスをポリ−L−リジンでコーティングするプロトコールを紹介します。
まずは、培養細胞の免染の大まかな流れを以下に示しておきます。
免疫蛍光染色の過程
・免染用の細胞の準備↓
・細胞の固定↓
・細胞膜の透過処理 (メタノール固定では不要) ↓
・ブロッキング↓
・一次抗体反応↓
・洗浄↓
・二次抗体反応↓
・洗浄↓
・核の染色↓
・封入↓
・顕微鏡での観察
固定→ブロッキング→一次抗体反応→二次抗体反応→封入というプロセスは培養細胞に限らず、組織切片の免染等においても共通であり、免染プロトコールの骨格と言えます。また、ウェスタンブロット等の抗体を使用する他の実験にも過程が類似していることに気が付くでしょう。
免染の詳細なプロトコールを説明する前に、まずは、予備知識について解説します。
固定法について
<細胞の固定>
免染を始めるにあたり、まずは細胞を生きた状態に近いままで固定する必要があります。細胞の固定には何通りかの方法がありますが、それぞれ一長一短があるので、免染したいタンパク質の局在などに応じて、適切な固定法を選ぶ必要があります。固定法の選択は免染において重要なファクターであり、固定法の違いによって、得られるデータが大きく異なることも珍しくありません。そのため、固定法の検討は重要です。
ここでは、特にメジャーな2つの固定法を紹介します。また、参考となる論文がある場合は、Materials & Methodsを参照してみましょう。
・ホルムアルデヒド固定
一般的な固定法で、膜タンパク質の免染にも使用できます。メタノール固定に比べると固定に時間がかかりますが、その分、タンパク質の変性能力はマイルドで、構造が大きく変化しないと言われています。
・メタノール固定
細胞骨格(特に微小管)や比較的rigidなタンパク質の観察に適した方法です。可溶化能力が高く、細胞膜がその影響を受けるため、膜タンパク質の免染には基本的に使用できません。
細胞が短時間で変化する現象を免染で評価する場合においては、細胞を素早く固定できるメタノール固定の方が、現象の一瞬を捉える上でホルムアルデヒド固定よりも適している場合があります。
なお、それぞれの固定法のプロトコールは後ほど説明します。
細胞の準備
予め決めておくこと
・播種する細胞数はどれくらいか、また、播種してから何時間後に固定・染色するのか
→これらは免染時の細胞密度(観察のしやすさに影響)や細胞周期の時間、トランスフェクションした遺伝子の発現に必要な時間などを総合的に考慮した上で、何通りかのパターンを試し、最適化する必要があります。
・カバーグラスにコーティングは必要か
接着が弱い細胞を免染する際には、予めポリ−L−リジンなどでコーティングしたカバーグラスの上で細胞を培養する必要があります。コーティング剤にはポリ−L−リジンの他にコラーゲンやラミニンなどありますが、どれを使用するかは、ひとまずその細胞を使用している論文を参考にしましょう。
次回のエントリーでは、カバーグラスをポリ−L−リジンでコーティングするプロトコールを紹介します。