2011年10月

接着細胞の継代

0. 細胞を倒立顕微鏡で観察し、細胞の状態を確認する。
→継代すべきタイミングか、またコンタミしていないかどうか等を判断する。継代する場合は1へ進む。

1. 培地をアスピレーターで吸引する。

2. ピペットの先をディッシュの壁面に沿わせるようにして、37℃に温めたPBS(-)を加える*。軽くディッシュをゆすることで細胞を洗浄し、その後アスピレーターでPBS(-)を取り除く。PBS(-)で洗う回数は1~2回。

*加えるPBSの量 (-) は培地の半量~等量程度

・冷たいPBS(-)を使うと、接着の弱い細胞は剥がれてしまうので、要注意。また、温めたPBS (-)を使用してもディッシュを強く揺すると剥がれることがあるので慎重に扱う。

3. トリプシン-EDTA溶液*をディッシュに添加する。その後、ディッシュの底面全体にいきわたらせたら、2~10分程度静置する。(はがれにくい細胞はトリプシン-EDTA溶液を加えたら、CO2インキュベーターの中に入れて温める)
また、細胞をトリプシン-EDTA溶液で処理している間に、新しいディッシュを用意しフレッシュな培地を入れておく。

培地の量 : 60 mmディッシュで3~4 mL、100 mmディッシュで8~12 mLが目安。
培地を多めに入れると、ちょっとした振動で培地がディッシュから溢れたり、フタにくっついたりしてコンタミの原因となる、従って、やや少なめ(ディッシュの半分以下の深さが目安)の方が良い。
・トリプシン-EDTA溶液の量や処理時間は細胞種によって異なるので、細胞種ごとに変更する。
*0.25% Trypsin, 1mM EDTA・4Naなどが用いられるが、トリプシンやEDTAの適切な濃度は細胞種によって異なる。細胞バンクのデータや論文のMaterials & Methodsを参考にする。
・トリプシン-EDTA溶液の量の目安は 60 mmディッシュで0.5-1 mL、100 mmディッシュでは1.5~2.5 mL程度。トリプシン-EDTA溶液の量が少ないと、細胞が乾いてしまう可能性があるので注意する。
・トリプシン-EDTA溶液は自己消化によって、保存中に活性が少しずつ落ちて行く。そのため、細胞を処理する時間もその分、延長する必要がある。検鏡しながら常に調節すること。また、適切な頻度でトリプシン-EDTA溶液を新品に交換することも重要。

4. 顕微鏡で細胞の様子を観察する。トリプシンが効いてくると細胞が徐々に丸くなってくる。ディッシュをゆすったときに細胞の大半が浮遊するようになったら、そのデッシュで普段使用する半量~等量の培地(血清入)を加え、ゆっくりと十数回ピペッティングする。その後、ディッシュを顕微鏡で観察し、細胞がバラバラになったか確認する。(細胞がバラバラになっていなかったら、さらにピペッティングする)

継代を簡略的に済ませる場合は、ステップ5a→6→7へ
細胞数を計測し播種量を厳密にする場合はステップ5b〜d→6→7へ


5a. 4の細胞懸濁液の5~20 %を新しいディッシュに移す。
トリプシン-EDTA溶液を継代後の培地に持ち込みたくない場合は、細胞懸濁液を15 mL遠心チューブに移して、1,000 rpmで5分間遠心。上清を取り除いたら、5mL程度の培地を加えて細胞を懸濁して、新しいディッシュに播種する。

5b. 4の細胞懸濁液を遠心チューブに移して、1,000 rpmで5分間遠心。上清を取り除いたら、培地を5mL加えて細胞をピペッティングで懸濁する。

5c.
血球計算盤を用いて、細胞懸濁液の細胞密度を求める。

5d. 目的の細胞数を新しいディッシュへ播種する。
(必要に応じて5bの懸濁液を希釈する)

6. 細胞が均等に広がるように、ディッシュをゆする。その後、検鏡して細胞が均一に分散しているか確認する。(細胞が偏っていたら、さらにディッシュをゆする)

7. ディッシュをCO2インキュベーターに入れる。
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凍結細胞の起こし方

1. 細胞培養室のウォーターバスを37 ℃に温めておく。

2. 液体培地やPBS(-)をウォーターバスで温める。培地を温めている間に、ディッシュなどの準備をしておく。

3. ディープ・フリーザーもしくは液体窒素中から凍結細胞の入ったクライオチューブを取り出し、アイスボックスに入れて、培養室まで運ぶ。

4. クリーンベンチ内で50 mLチューブに温めた培地を15mL程度入れる。
遠心機の関係等で50mLチューブが使えない場合は、15mLチューブに10mL程度の培地を入れておく。

5. 細胞の入ったクライオチューブをウォーターバスにつけて温める。このときチューブのふたの部分にまでウォーターバスの温水が達しないようにする。(コンタミを防ぐため)

6. クライオチューブの壁面付近が溶けてきて、凍った部分が浮き上がった状態になったら、ウォーターバスからチューブを取り出し、キムタオル等でチューブ外面の水分を拭きとる。その後、70 % エタノールをチューブにスプレーしてから拭き、クリーンベンチ内に入れる。

(この時、クライオチューブにマジックで字を書いておくと、エタノールにより消えることがあるので注意する。なお、メンディングテープで書き込み部分をカバーしておくと、エタノールをかけても消えにくくなる)

7. 培地の入った50 mLチューブに溶けた細胞を入れて、室温(20-25℃)、1,000 rpm で5分間遠心する。

8. 遠心後、アスピレーターで上清を取り除く。その後、8 mL*の培地を加えて、やさしくピペッティングする(ピペットエイドを使うと便利)。

11. 懸濁した細胞を2枚の6 cmディッシュに4 mL*ずつ蒔き、CO2インキュベーターに細胞を入れる。(ここで使用した凍結細胞は6cmデッシュからハーベストしたものと仮定)

2~3時間後に(遅くとも翌日中には)検鏡し、細胞が生存しているか確認する。接着細胞の場合、生きている細胞は、ディッシュの底にくっついている。

*細胞の量などにより、培地量やディッシュのサイズは適宜調節する。
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