プライマーの探索と設計①では、実験の目的にあったプライマーを既存のものから探すための方法について述べました。常に既存のプライマーを利用できれば良いのですが、実際の研究ではそうはいかない場合も多々あります。その際には自分でプライマーを設計することになるわけですが、今回のエントリーではその方法について述べてみたいと思います。
プライマーの設計
現在では、多くの遺伝子解析ソフトにプライマーを設計する機能がついていますし、ウェブベースの設計ソフトも充実していますから、簡単にプライマーを設計することができます。
プライマー設計ソフトが弾き出した候補の中から選ぶことで、十分に間に合うことが多く、設計というよりは、選定に近いというのが昨今の状況でしょう。
とはいえ、設計ソフトを利用する際には、自分で各種パラメータを設定する必要がありますし、設計ソフトが提示した候補の中からより適切なプライマーを選択するためにも、プライマーの設計ルールを知っておくことは重要です。したがって、このセクションでは、まずプライマー設計におけるルールを概説し、その後、代表的なプライマー設計ソフトのひとつであるPrimer3の使い方を紹介したいと思います。
プライマー設計のルール
・ GC含有率は50~60 %程度が望ましい
・ 塩基数は18-30程度
・ それぞれのプライマーのTm値が近いこと
(できれば、5℃以内、最大でもTm値の差は10℃以内に抑えたい)
・ プライマーが高次構造を取らないこと
・ プライマーどうしがアニーリングしないこと
・ 目的の配列以外にアニーリングしないこと
・ cDNAをテンプレートにする場合は、forwardとreverseのそれぞれのプライマーが、できるだけ別々のエキソン由来の配列に結合するように設計する。
(発現解析などの際に、cDNAではなくゲノムDNAを増幅してしまったという可能性を排除するため)
Primer3を利用したプライマーの設計
ここまで、プライマーの設計の一般的なルールについて概説しましたが、それらのルールに則りプライマーを設計してくれる優秀なソフトがWeb上にはいくつも存在しています。ここではそれらの中から、Primer3というソフトを紹介したいと思います。
Primer3
http://frodo.wi.mit.edu/primer3/
もしくは
http://biotools.umassmed.edu/bioapps/primer3_www.cgi (ミラーサイト)
Primer3はMITのWhitehead Instituteで開発されたプライマー設計ソフトで、最も広く使用されているもののひとつです。基本的な使い方としては、増幅したい標的の配列をテキストデータかFASTA形式でペーストし、プライマーの長さやTm値、GC含有量などを指定してから、「Pick Primers」をクリックします。各パラメータの設定に関しては、上述したプライマー設計のルールを参考にしてください。
図解:Primer3の基本的な使い方
(ここでは、本家MITのサイトではなく、University of Massachusetts Medical Schoolのミラーサイトを使用していますが、使い方は同じです。)
画像をクリックすると拡大します。
まず、テンプレートとなるDNAの配列をペーストします。次に、PCR産物の大きさを設定します。
プライマーの長さやTm値の範囲、GC含有量などを設定し、Pick Primersをクリックします。
あとは、Primer3が返してきたいくつかの候補を互いに比較して、ベストと思われるプライマーのセットを選択します。
なお、ここで紹介した基本的な使い方では、最低限のパラメータしか変更していません。多くの実験では、これで十分かと思いますが、実験によっては、より多くのパラメータについて、細かく設定した方がベターな場合もあるでしょう。
プライマーへの制限酵素部位の付加
PCR産物のサブクローニング等を目的として、制限酵素部位をプライマーの5’末端に付加する場合には、一般的に制限酵素部位に加えて、余分な塩基を追加する必要があります。
これは、制限酵素がDNAを切断する際に、制限部位だけでなく、“足場”となる塩基を必要とするためです。
例えばBam HIの場合、効率良く切断するには、DNAの末端を
5’GGATCCNNNNNNN・・・・・3’
3’CCTAGGNNNNNNN・・・・・5’
(青字はBam HIの制限部位)
ではなく、
5’NNNGGATCCNNNNNNN・・・・・3’
3’NNNCCTAGGNNNNNNN・・・・・5’
赤字NNNは任意の塩基で、“足場”として機能する
という構造にする必要があります。
足場として必要な塩基の数は、制限酵素ごとに異なりますが、多くの制限酵素は3塩基あれば十分とされています。(ref.1)
また、足場となる塩基の配列は、基本的には任意なのですが、G, Cが3塩基以上連続せず、なおかつ二次構造をとらないような配列がお勧めです。
なお、それぞれの制限酵素が足場として必要とする塩基数を知りたい場合は、New England BioLabs社のカタログ巻末にあるテクニカルリファレンスを参照してください。
(なお、NEB社のカタログには、末端からの塩基数にさらに4塩基を追加するように書かれていますが、この4塩基は必ずしも必要ではありません。また、こちらのウェブサイトも参考になるでしょう。http://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.asp?unitid=U100006082
Ref.1 Zimmerman K. et al BioTequniques 24, 582-584 (1998)
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タグ:PCR
プライマーの設計
現在では、多くの遺伝子解析ソフトにプライマーを設計する機能がついていますし、ウェブベースの設計ソフトも充実していますから、簡単にプライマーを設計することができます。
プライマー設計ソフトが弾き出した候補の中から選ぶことで、十分に間に合うことが多く、設計というよりは、選定に近いというのが昨今の状況でしょう。
とはいえ、設計ソフトを利用する際には、自分で各種パラメータを設定する必要がありますし、設計ソフトが提示した候補の中からより適切なプライマーを選択するためにも、プライマーの設計ルールを知っておくことは重要です。したがって、このセクションでは、まずプライマー設計におけるルールを概説し、その後、代表的なプライマー設計ソフトのひとつであるPrimer3の使い方を紹介したいと思います。
プライマー設計のルール
・ GC含有率は50~60 %程度が望ましい
・ 塩基数は18-30程度
・ それぞれのプライマーのTm値が近いこと
(できれば、5℃以内、最大でもTm値の差は10℃以内に抑えたい)
・ プライマーが高次構造を取らないこと
・ プライマーどうしがアニーリングしないこと
・ 目的の配列以外にアニーリングしないこと
・ cDNAをテンプレートにする場合は、forwardとreverseのそれぞれのプライマーが、できるだけ別々のエキソン由来の配列に結合するように設計する。
(発現解析などの際に、cDNAではなくゲノムDNAを増幅してしまったという可能性を排除するため)
Primer3を利用したプライマーの設計
ここまで、プライマーの設計の一般的なルールについて概説しましたが、それらのルールに則りプライマーを設計してくれる優秀なソフトがWeb上にはいくつも存在しています。ここではそれらの中から、Primer3というソフトを紹介したいと思います。
Primer3
http://frodo.wi.mit.edu/primer3/
もしくは
http://biotools.umassmed.edu/bioapps/primer3_www.cgi (ミラーサイト)
Primer3はMITのWhitehead Instituteで開発されたプライマー設計ソフトで、最も広く使用されているもののひとつです。基本的な使い方としては、増幅したい標的の配列をテキストデータかFASTA形式でペーストし、プライマーの長さやTm値、GC含有量などを指定してから、「Pick Primers」をクリックします。各パラメータの設定に関しては、上述したプライマー設計のルールを参考にしてください。
図解:Primer3の基本的な使い方
(ここでは、本家MITのサイトではなく、University of Massachusetts Medical Schoolのミラーサイトを使用していますが、使い方は同じです。)
画像をクリックすると拡大します。
まず、テンプレートとなるDNAの配列をペーストします。次に、PCR産物の大きさを設定します。
プライマーの長さやTm値の範囲、GC含有量などを設定し、Pick Primersをクリックします。
あとは、Primer3が返してきたいくつかの候補を互いに比較して、ベストと思われるプライマーのセットを選択します。
なお、ここで紹介した基本的な使い方では、最低限のパラメータしか変更していません。多くの実験では、これで十分かと思いますが、実験によっては、より多くのパラメータについて、細かく設定した方がベターな場合もあるでしょう。
プライマーへの制限酵素部位の付加
PCR産物のサブクローニング等を目的として、制限酵素部位をプライマーの5’末端に付加する場合には、一般的に制限酵素部位に加えて、余分な塩基を追加する必要があります。
これは、制限酵素がDNAを切断する際に、制限部位だけでなく、“足場”となる塩基を必要とするためです。
例えばBam HIの場合、効率良く切断するには、DNAの末端を
5’GGATCCNNNNNNN・・・・・3’
3’CCTAGGNNNNNNN・・・・・5’
(青字はBam HIの制限部位)
ではなく、
5’NNNGGATCCNNNNNNN・・・・・3’
3’NNNCCTAGGNNNNNNN・・・・・5’
赤字NNNは任意の塩基で、“足場”として機能する
という構造にする必要があります。
足場として必要な塩基の数は、制限酵素ごとに異なりますが、多くの制限酵素は3塩基あれば十分とされています。(ref.1)
また、足場となる塩基の配列は、基本的には任意なのですが、G, Cが3塩基以上連続せず、なおかつ二次構造をとらないような配列がお勧めです。
なお、それぞれの制限酵素が足場として必要とする塩基数を知りたい場合は、New England BioLabs社のカタログ巻末にあるテクニカルリファレンスを参照してください。
(なお、NEB社のカタログには、末端からの塩基数にさらに4塩基を追加するように書かれていますが、この4塩基は必ずしも必要ではありません。また、こちらのウェブサイトも参考になるでしょう。http://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.asp?unitid=U100006082
Ref.1 Zimmerman K. et al BioTequniques 24, 582-584 (1998)
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