2011年03月

インパクトファクターの算出や論文の被引用データなどで定評のあるトムソン・ロイターの論文データベース Web of Scienceがこの程、被災した研究者に向けて開放されました。

トムソン・ロイターのプレスリリースはこちら

実際には東大と京大の付属図書館のウェブサイトから利用することになるようです。
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この度、東京大学付属図書館が東北関東大震災で被災した研究者のために、電子ジャーナルなどへのアクセスを4月末まで開放することにしたそうです。

http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/koho/news/news/fuzokuto_11_03_16.html
(注:被災地域以外からの安易なアクセスを避けるため、直接リンクはしておりません)

ソース:国会図書館 Current Awareness Portal

また、米国国立医学図書館も被災地で救助にあたっている医療従事者が、必要な医療情報にアクセスできるよう同様のアクセス開放を4月8日まで実施しています。
http://eai.nlm.nih.gov/docs/captcha/test.pl?url

今後も被災された研究者のお役に立ちそうな情報がありましたら、随時このブログにアップしていきたいと思います。

3月17日 追記
北大や京大、名大などの付属図書館も続々と被災した研究者へのサービスを開始したようです。
詳しくは、国会図書館のCurrent Awarenessよりご確認ください。
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まず、今回の地震でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするするとともに、被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。

また、東北大をはじめとし、多くの研究機関で大きな被害が出ていると聞いております。もちろん、人命ほど尊いものは有りませんが、長年の研究と努力によって蓄積された貴重なサンプルやデータを一瞬で失った研究者の方々のことを思うと、何ともやりきれない思いにとらわれます。

一日でも早く、研究が再開できるようお祈りしております。

また、震災の影響を受けなかった基礎研究者の中には、この大災害のニュースを見て、自分のやっている研究がちっぽけに思えたり、どれほどの意義があるのか疑いたくなった方もいるかもしれません。
しかし、今までの歴史が証明しているように、ひとつひとつの研究が積み重なることによって、科学は人類に貢献してきました。今、あなたがやっている研究が、今日や明日役に立たなくても、それが将来、なんらかの形で人の命を救うことに貢献すると信じて、研究に打ち込むしかありません。
今回の震災の現場で人の命を救っている薬だって、その開発には些細と思われたいくつもの研究が何らかの貢献しているはずです。ですから、未来のために一歩一歩、いま自分にできること、つまり研究を進めていってほしいと思います。


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プライマーはPCRの成否を左右する大きな要素のひとつです。プライマーがきちんと機能しなければ、サンプル調整や条件設定がどんなに適切でもPCRは走りません。
それ程までにプライマーは重要なわけですが、やっかいなのは、増幅したい対象が異なれば、その都度プライマーを変える必要があり、常に適切なプライマーを使用しなければならないということです。PCRは現在の生命科学研究で最も頻用される実験法のひとつですから、日々の研究において、このプライマーの問題を素早く解決することが、研究をスムーズに進行させる上で必要と言えるでしょう。
では、どうしたら良いのでしょうか。
今回と次回の2回のエントリーに渡って、その方法について述べていきたいと思います。


プライマーに対する基本的なスタンス
PCRで使用するプライマーは、できるだけ既存のものを利用し、もし目的に合ったプライマーがなければ、自分で設計する、というのが基本的スタンスになります。そこで、それぞれの方法について、Lablogue流の方法を説明していきたいと思います。

既存のプライマーを利用する場合
論文やデータベース等にあるプライマーの利用は、そのプライマーが自分の目的に合えば、とても便利です。なぜなら、すでに先人が設計・条件検討を行い、上手くPCRが走ることを確認してくれている訳ですから。もちろん、それを使用する際には、ポジコンが取れるか確認しなければなりませんが、プライマーの設計と条件検討にかかる時間を大幅に節約することができますから、これを利用しない手はありません。

既存のプライマーを探すための手段としては、

1. 論文から探す
2. プライマーのデータベースを利用する


が挙げられます。

1. 論文からプライマーを探す
論文からプライマーを検索する場合は、Pub Medなど利用して、目的の遺伝子名で検索を行い、ヒットしてきた論文をしらみ潰しに当たっていくのでも良いのですが、ここではもう少し効率の良い方法を紹介します。


Google Scholarを利用した論文からのプライマー検索
Google Scholar (http://scholar.google.com/)の良い点は、論文のタイトルやアブストラクトだけでなく、論文の文中も検索対象となることです。文中ということは当然、論文中のMaterials and Methodsも含まれます。そして、そのMaterials and Methodsにはプライマー配列や、PCRの条件(アニーリングの温度や伸長時間、サイクル数など)が記載されています。

つまり、Google Scholarを利用することで、論文のMaterials and Methodsを検索し、容易にプライマーとPCRの条件を見つけることができるのです。

検索する際には、検索語句として
「生物名」、「遺伝子名」、「PCR」、「primer」の4つの語句を使用します。

例: mouse p16 PCR primer

後は、ヒットしてきた論文をいくつかチェックして、使えそうなプライマーを選ぶだけです。
なお、実験の目的によっては、単に「PCR」とするのではなく、「RT-PCR」や「quantitative PCR」などと、より具体的な語句で検索すると、より的確なプライマーを見つけられるでしょう。

2. データベースを利用したプライマーの選定
近年、生命科学研究に関する様々な情報がデータベースに蓄積されています。プライマーに関しても、いくつかのデータベースが存在しており、特に定量的PCRに関しては充実しています。


プライマーデータベースの例
1. PrimerBank
http://pga.mgh.harvard.edu/primerbank/index.html
各プライマーによる実験データが見られる点がGood !

2. Quantitative PCR Primer Database
http://lpgws.nci.nih.gov/cgi-bin/PrimerViewer
プライマーの元になった文献へのリンクがあってGood ! リアルタイムPCRのプライマーを探すときにどうぞ。

また、モデル生物を使って研究している場合は、そのモデル生物のデータベースにプライマー配列が収められている場合がありますので、チェックしてみてください。

ざっとした概略ではありますが、以上が既存のプライマーを利用する際の実際的な方法となります。常に既存のプライマーを利用できれば良いのですが、実験の目的によっては、既存のものでは対応できないこともよくあります。そんな時には、自分でプライマーを設計することになりますが、それについては次回のエントリーで説明します。


関連したエントリー群
タグ:PCR
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