2011年02月

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近年、アメリカでは一般大衆の科学への関心を喚起するために、National Lab DayやFamily Science Daysなどの様々な取組みがおこなわれるようになってきました。

そのような中で、米国科学アカデミー(The National Academy of Sciences)も、様々な取組みを行っています。
そのひとつがThe Science & Entertainment Exchange http://www.scienceandentertainmentexchange.org/という活動で、TV番組や映画の製作に科学者がアドバイザーとして参加して、その内容を科学的により正確かつ魅力的にするためのサポートをしているそうです。

このThe Science & Entertainment Exchangeが主催する会議(Science, Entertainment, and Education Summit)が2月4日に、TV・映画製作者と科学者、教育者を集めてハリウッドで開かれ、そこでハワード・ヒューズ医学研究所(以下、HHMI)が、このエントリーのタイトルにもあるように、総額6,000万ドルにもおよぶ科学ドキュメンタリーの製作を発表しました。(プレスリリースはこちらから

このプロジェクトを指揮するHHMI副所長のSean B. Carroll博士によると、
優れた教育とエンターテイメントに共通する点はgood storytellingであるとし、それを今回の科学ドキュメンタリーで実現し、大衆へと届けるけるために

We want to work with the best storytellers and the best scientists to bring great stories about science and scientists to large audiences.

とコメントしています。この、「最高のストーリーテラーと最高の科学者」というくだりには、全米で最高クラスの生命科学者を選りすぐって支援するHHMIらしいこだわりが感じられます。

また、HHMIはこの科学ドキュメンタリーにおいて、科学の発見のプロセスを伝えることを重視しており、それによって人々に科学という営みがどういうものなのかを理解してもらうこと期待しているそうです。
単に科学の成果や恩恵だけでなく、それがいかにして発見されたのかということを魅力的に語る。これはより深い理解をもたらすだけでなく、人々の好奇心をくすぐり科学へと引き込むために有効な方法に思えます。




番外編:ROCKRSTERS OF SCIENCE
アメリカでは科学者をロックスターになぞらえて、科学だってロックンロールと同じくらいクールだぜ!的なノリで科学への興味関心を引こうとする、その名もROCKRSTERS OF SCIENCE(以下のリンクから)なんて活動もあります。

ROCKRSTERS OF SCIENCE
http://www.rockstarsofscience.org/ → 結構有名な科学者たちがひと昔前(ココがポイント)のロックスターと一緒にポーズなんかとっちゃってます。

でもHHMIのやり方のほうが、ずっと効果的で趣味いい気がします。
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前回のエントリーでお約束したように、ここではプライマーのTm値の計算法について説明いたします。

基本的には、オリゴハウス(プライマーメーカー)はTm値(理論値)を記載したデータシートを添付してくれますが、参考までにTm値の計算法を示しておきます。Tm値の計算法はいろいろありますが、ここでは、塩濃度を考慮した計算法を示しておきます。

Tm(℃) = 81.5 +16.6(log[M+]) + 0.41(%[G+C]) – 500/n・・・①
M+: 一価の陽イオン
n : プライマーの長さ(塩基数)
%[G+C]:GCの割合(%)

多くのPCR反応系ではM+(Na+もしくはK+)の濃度は50 mM(=0.05 M)と考えて良いので、
log 0.05 = -1.3 であることから①の式は

Tm(℃) = 59.9 + 0.41(%[G+C]) – 500/n・・・②

とすることができます。

・計算例
塩基数が20でGC含有量が50%のプライマーの場合

Tm(℃) = 59.9 + 0.41x 50 – 500/20 = 55.4 ℃

なお、プライマーのTm値を計算してくれる便利なサイトがいくつかありますので、ご紹介しておきます。

1. http://www.basic.northwestern.edu/biotools/oligocalc.html
2. http://protein.bio.puc.cl/cardex/servers/melting/sup_mat/servers_list.html

サイトによっては、②式のバリエーションや、最近接法(Nearest Neighbor Method)という熱力学的な手法によってTm値を算出しています。そのため、②式とは結果が一致しない場合があります。なお、一般的には最近接法が最も実測値に近い値を算出できるとされています。

最近接法についてより詳しく知りたい方は、こちらのサイトを参照してみてください。
http://www.sigmaaldrich.com/japan/lifescience/custom-products/custom-dna/oligo-learning-center.html#o04


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PCR
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PCRの反応系調整に続いて、このセクションでは反応条件の設定法について説明したいと思います。

PCR:反応条件の設定

ご存知のように、PCRは一般的に以下のステップからなり、2~4のサイクルによってDNAが増幅されます。

1. サイクル前の熱変性 (Initial denaturation)
2. 熱変性 (Denaturation)
3. アニーリング (Annealing)
4. 伸長反応 (Extension)
5. 最後の伸長反応 (Final extension)



これらの各ステップの条件(温度と時間)設定について、ひとつずつ見ていきましょう。


1. サイクル前の熱変性
ゲノムDNAなど長いDNAをテンプレートにする場合は、最初に94 or 95℃で1~5分程度加熱します。これは、テンプレートDNAを十分に変性させるためです。テンプレートが長く、またGCリッチなものほど、このステップに時間をかけると良いでしょう。ただし、熱変性に時間をかければかけるほど、DNAポリメラーゼは失活しやすくなりますから、変性時間を長く(数分程度)する場合は、熱変性後にDNAポリメラーゼを加えることが必要になる場合があります。
なお、プラスミドをテンプレートとする場合は、94 or 95℃で30秒という条件で十分です。

2. 熱変性
PCRのサイクルにおける熱変性は多くの場合、94 or 95℃で30~60秒という条件で対応できます。熱変性においては、GC含有量(鋳型DNA中のGC塩基対の割合)が多いほど、高い温度でより時間をかける傾向にあります。
GC含有量が特に多くなければ、まずは「94℃、30秒」で試してみましょう。


3. アニーリング
アニーリングの条件は、PCRの条件設定の中でも、実験ごとに(プライマーごとに)適宜設定する必要があり、実験に成否に大きく関わってくるファクターです。特に自分で新しくデザインしたプライマーを使用する場合、アニーリングの温度については、確実に目的の配列が含まれているDNAをコントロールの鋳型として用いて、条件検討する必要があります。

・アニーリングの温度
アニーリングの温度が低すぎる場合は、非特異的な増幅が起きてしまいますし、逆に高すぎれば、プライマーと鋳型DNAが塩基対を形成できず、増幅は起こりません。
まずはプライマーの融解温度*(Melting Temperature, Tm)より2~4℃低い温度で試し、その温度で上手く行かない場合は、Tm±6℃くらいのレンジで検討すると良いでしょう。

具体的には、
非特異的な増幅が起こる時:温度を上げていく。
増幅が起こらない時:温度を下げていく。
ということになります。いずれの場合も2℃刻みで検討していきます。

*ここでのTm値は一組のプライマーのうち、低い方のTm値を用います。
(Tm値の計算法については、また別のエントリーで詳述します)

なお、温度勾配(グラジエント)に対応したサーマルサイクラーやマルチブロックのサーマルサイクラーを使用すれば、1度に数種類のアニーリング温度を検討することができます。

・アニーリングの時間
アニーリングの時間は、30〜60秒が一般的です。 まずは、30秒で試してみましょう。


伸長反応

伸長反応における条件、つまり温度と時間は、DNAポリメラーゼの性能と増幅するDNAの大きさによって決定されます。それぞれのDNAポリメラーゼによって、至適温度と伸長速度は異なりますから、DNAポリメラーゼに添付されているインストラクションに従って、条件を設定します。Taq系のDNAポリメラーゼであれば、72℃で20秒(0.5 kbまで)ないし40秒(1kb まで)程度の条件を用いることが多いでしょう。


サイクル数
PCR産物がある量に達するために必要なサイクル数は、基本的には鋳型DNAのコピー数とPCRの増幅効率によって決まります。とはいえ、正確なコピー数や増幅効率を求めることは容易ではありません。そこで、厳密に定量的である必要がない場合は、一般的なサイクル数として、25~35回程度に設定すればよいでしょう。当然のことながら、鋳型DNAのコピー数が少ない時ほど、サイクル数を増やします。
PCR産物の量とサイクル数の関係について、詳しく知りたい方は、Molecular Cloning 3 rdの8.12を参照してみてください。。


最後の伸長反応

PCRのサイクルが終了した後、伸長反応を完結させるために72℃で7分程度インキュベートします。この最後の伸長反応は、PCR産物をそのままサブクローニングする場合などに、念のためとうことでやればよいのですが、コロニーPCRなどのバンドの有無だけを見る場合は省略してかまいません。

冷却
最後の伸長反応終了後は、4℃、∞に設定する方が多いでしょう。しかし、この状態で長時間放置することは、DNAの分解につながるだけでなく、ヒートブロックの寿命を縮めることにもなります。従って4℃まで下がったら、できるだけ速やかに凍結保存するなり、次のステップに移りましょう。


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タグ:PCR
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