2010年10月

先日、ネットサーフィンの際に興味深い記事を見つけたので、ここで紹介しておきたいと思います。


Photo by DanBrady

GIZMODO
米国には博士号を持っている清掃作業員が5,000人いる


この記事によると、米労働省労働統計局が行った調査の結果、清掃作業員として働いている人の5パーセント(10万7千人)が大卒以上で、その中には5千人もの博士号取得者もしくは同程度の職能者(Doctoral or professional degrees)が含まれていることがわかったそうです。(ちなみにここで言う、Doctoral or professional degreesとは、一般に博士号取得者や医師、歯科医師、弁護士などを指します)
また、この記事の元ネタによると、ウェイター/ウェイトレスとして働いているDoctoral or professional degreeは8千人にのぼるそうです。
"Doctoral or professional degrees"という括りの中で、doctoralとprofessional degreesの割合は示されていませんが、後者の職業的安定性を考えれば、多くがdoctoralと考えられます。
とすると、やはりポスドクまでいったものの、その後の研究者としてのキャリアが続かずにドロップアウトしてしまった人々が大半を占めるのではないでしょうか。


なお、アメリカにおける各職業の最終学歴に関する統計がありますので、参考として紹介しておきたいと思います。
http://www.bls.gov/emp/ep_dataset_edtrain.pdf


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今回のエントリーでは、アガロースゲル電気泳動によって分離したDNAをゲルから切出して、精製するプロトコールをご紹介します。

現在、ゲルからの切出し精製は、市販のキットを使用する場合がほとんどであり、キットのインストラクションに従って作業すれば簡単に精製できます。
しかし、私の個人的な経験では、サブクローニングをしようとする実験初心者が最もつまずきやすいのが、このゲルからの切出し精製なのです。
そこで、このエントリーでは代表的なゲル切り出し精製キットであるQiagen社のQIAquick Gel Extraction Kitを例に、実験初心者でもきちんと切出し精製ができるように、インストラクションを補いつつ、コツを織りまぜたプロトコールを紹介したいと思います。


QIAquick Gel Extraction Kitを用いたアガロースゲルからのDNA精製

<キットの特徴と留意点>
・ 70~10 kbのssDNA、dsDNAを精製できる。
・ 1個のスピンカラムで最大400 mgのアガロースゲルから精製できる。

・ Buffer PEをはじめて使う時は、100 %エタノールを加える。
  (エタノールの添加量はBuffer PEの容器に記載されている)


プロトコール

・ ヒートブロックを50 ℃に温めておく。
・ 遠心操作はすべて13,000 ~ 15,000 rpm、室温で行う。


1. ゲルの切出しに使うカミソリやカッターの刃を70%エタノールとキムワイプできれいにしておく。
また、切出したゲルを入れるための1.5 mLマイクロチューブを用意し、その重量を測っておく。

2. トランスイルミネーターにラップを敷き、そこへエチジウムブロマイド染色したアガロースゲルを置く。

3. トランスイルミネーターのスイッチを入れる。紫外線の波長は302 or 365 nm(できれば365nm)で、出力はバンドが見える範囲で弱くする。(強い紫外線を当てるとDNAに変異が入りやすくなるため)

4. アガロースゲルから目的のバンドを切り出す。このとき、できるだけバンド部分以外のゲルが少なくなるようにする。

5. 切り出したゲルを1で重量を測っておいたマイクロチューブに入れる。その後、イエローチップでゲルをつぶして、細かくする。(→ゲルを細かくし、ステップ8で溶け易くするため)

6. ゲルを入れたマイクロチューブの重さを測り、切り出したゲルの重さを算出する。

1個のスピンカラムで処理できるゲルの量は最大で400 mgなので、それを超えていたら、新しいマイクロチューブにゲルを半分程度移す。
(ミニゲルを使用した場合、コームの大きさにもよるが、切り出したゲルは数十〜200mg程度になる)


7. ゲルの重さに対して3倍量のBuffer QGを加える。
例 : ゲル切片が80 mgだったら240 uLのBuffer QGを加える。なお、アガロースゲルの濃度が2 %を超える時はゲルの6倍量を加える。

8. チューブを50 ℃で10分 インキュベートする 。この際、3分に1回ボルテックスすると溶けやすくする。

10分たってもゲルが溶け残っていたら、さらに50℃でのインキュベートとボルテックスを続ける。(完全に溶けるまで)

9. ゲルが溶けたとき、Buffer QGの色が黄色 (pH 7.5以下)であることを確認する。もし、そうでなかったら3 Mの酢酸ナトリウム (pH 5.0) を10 uL程度加えて黄色になるようにする。
(pH 7.5以下でないとスピンカラムにDNAが十分に吸着しない。なお、Buffer QGはpH 7.5よりアルカリ側ではオレンジ色~紫色へと変化する。)


10. ゲルと同量のイソプロパノールを加えて数回インバートする。
例 ゲルが80mgだったら、80 uLのイソプロパノールの加える。

11. 2 mLのコレクションチューブにスピンカラムをセットする。(共にキットに付属)

12. カラムにゲル溶解物をアプライし、1 分遠心する。この操作によってカラムにDNAを吸着させる。
遠心後、フロースルーを捨て、同じコレクションチューブを再びカラムに装着する。

スピンカラムには800 uLまでアプライできる。例えば、切出したゲルが300 mgで、900uLのBuffer QGと300 uLのイソプロパノールの計1.2 mLが加えられている場合は、2回に分けて遠心する。

13. ゲルから精製したDNAをin vitro転写、マイクロインジェクションなどに使用する場合は、0.5 mLのBuffer QGをカラムにアプライし1 分遠心する。この操作はアガロースを完全に取り除くために行う。精製したDNAを上記以外の用途に使う場合は、このステップは省略する。

14. 750 uLのBuffer PEをスピンカラムへアプライし、1 分遠心する。精製したDNAをダイレクトシークエンシングやBlunt-end ligationに使う時は、Buffer PEをカラムに添加してから2~5 分置いた後、遠心する。(脱塩のため)

15. コレクションチューブに溜まったフロースルーを捨て、カラムに再びセットしもう一度、1 分遠心する。(エタノールを十分に除去するため)

16. スピンカラムを新品の1.5 mLマイクロチューブにセットする。

17. 最後に、カラムに吸着されたDNAを溶出させるが、ここでは2種類の方法を紹介する。

方法1(メーカーのインストラクションに記載されている方法)
30 uLのBuffer EB or 滅菌MilliQ水を、カラムのメンブレンに直接滴下し、1 分置いてから1分遠心する。

方法2 (Lablogue管理人の方法)
30 uLのBuffer EB or 滅菌MilliQ水をスピンカラムのメンブレンに直接滴下し、1 分遠心する。その後、フロースルーをもう一度スピンカラムのメンブレンに滴下し、1 分遠心する。(計2回スルーさせることで、十分にDNAを溶出させる
なお、DNAの濃度を上げたい場合は、30uLよりも少ない量のEBもしくは滅菌MIlliQ水(21~24uL)で溶出する。

18. -20で保存。
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