2010年09月

本日、9月24日は全国ポスドク感謝の日(National Postdoc Appreciation Day)です。ただし、アメリカでの話ですが。


Photo by Argonne National Laboratory

このポスドク感謝の日とは、全米ポスドク協会(National Postdoctoral Association、以下NPA )
が、アメリカの科学研究におけるポスドクの貢献を称え、啓発するために、昨年制定したもので、今年で2回目となります。
初めて実施された昨年は、アメリカやカナダの70を超える大学・研究機関において、バーベキューやワインパーティーなどポスドクを慰労するための催しが行われたそうです。

催しの内容は本来の趣旨とちょっと違うような気もしますが、まずはこの記念日を制定したことに第一歩としての意義があるのかもしれません。

さて、このNPAはポスドクの待遇改善を目的として2003年に設立されたNPOで、これまでにNIHやOSTP(科学技術政策局)、米国アカデミーなどに対してパブコメや陳情を行っており、少しずつではありますが、成果を上げているようです。

このように、自らのために立ち上がり声を上げるのは、実にアメリカ的であると思える一方で、日本にこのような組織が無いのは国民性からして当然のように感じられます。とはいえ、ポスドクという限られた期間のなかで一定の研究成果を出さなければならない立場にある以上、研究以外のことにかまっている暇など無いというのが本音であり、やむ得ない面があるもの確かです。
そうなってくると、彼らの要望をくみ取ってそれを政策に反映するための仕組みが必要なりますが、そこに「当事者の生の声」が無ければ、本当に彼らのためになる政策や制度は出てこないでしょう。その点では、ポスドクも最低限の主張はしなければならないと言えます。


ところで、9月もあと一週間ほどとなりました。M1の方は、そろそろ本格的に就活が始まる時期ですが、まだ進学か就職かを決めかねている人もいるでしょう。博士後期課程へ進学した場合、博士号を取得した後に多くの人がポスドクという道を辿りますが、ポスドクというキャリアがどんなものなのかを知る上で、良いソースがありますので、紹介しておきたいと思います。進路選択のお役に立てば幸いです。

ポストドクター等の研究活動および生活実態に関する実績

この報告書は文部科学省の科学技術政策研究所が2007~2008年にかけて、約1,000人のポスドクを対象に行ったアンケートの結果をまとめたもので、

・ ポスドクの平均任期は2.7年
・ 平均月給は306,000円*
・ 筆頭著者の論文数は0.74本/年


等々、その研究活動や生活の実態の一端が明らかにされています。
報告書自体は241ページもありますが、最初の概要の部分を読むだけでもおおまかな内容は把握できるでしょう。個人的には、科学研究に関わる全ての人に読んで欲しい報告書だと思います。



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今回のエントリーでは、アルカリホスファターゼによるDNAの脱リン酸化プロトコールを紹介します。

DNAの5'末端を脱リン酸化するには、アルカリホスファターゼが用いられます。このアルカリホスファターゼは通常、大腸菌由来のもの(BAP, bacterial alkaline phosphatase)か仔牛小腸由来のもの(CIAP, calf intestine alkaline phosphatase)が用いられますが、このエントリーでは、高温下で強力に脱リン酸化が可能なBAPを使用したプロトコールを紹介します。


アルカリホスファターゼ処理のプロトコール

ここではタカラバイオのBacterial Alkaline Phosphatase (2120 A/B)を用います。

0. ヒートブロックを65℃にセットしておく。

1. 以下の組成で反応液を調整する。
(ここでは、20uLのスケールで制限酵素処理したDNAをBAP処理する場合の反応系となっている)






滅菌MilliQ水 24 uL
10 x AP Buffer 5 uL
DNA 溶液(制限酵素処理後のまま) 20 uL
BAP 1 uL
total 50 uL

*基本的に、制限酵素処理したDNAは精製せずにBAP処理できる


2. 65℃で30分インキュベート。

<以下、精製>
3. 50 uLの滅菌MilliQ水をBAP処理の完了したチューブに加え、全量を100 uLとする。

4. 100 uLのフェノール/クロロホルム (1:1)を加えて、vortexで十分に混合。その後、15,000 rpm、室温で5分遠心し、水層を新しいマイクロチューブに移す。これを2〜3回行う。
その後、100 uLのクロロホルムを加えてvortex。15,000 rpm、室温で5分遠心し、水層を新しいマイクロチューブに移す。ただし、このクロロホルム抽出は省略しても問題無いことが多い。

5. 10 uLの3 M酢酸Na、250 uLの100 %冷エタノールを加えて混合し、氷上で15 分置く。

4. 15,000 rpm、4 ℃で15分遠心する。

5. 上清を除き、500 uLの70 %EtOH(冷でも室温でも可)を加えたら、15,000 rpm、4 ℃で5分遠心する。

6. 上清を捨て、乾燥させる。

7. 適量(20uL前後)のTEバッファーにDNAを溶解させる。すぐに使用しなければ-20 ℃で保存。



サブクローニング関連のプロトコール
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