サブクローニングニング等に用いるプラスミドを調整する際、そのプラスミドがhigh-copyタイプならば、2mLの培地で培養した大腸菌から十分な量のプラスミドが得られます。
しかしながら、pETベクターなど、比較的コピー数の少ないプラスミドを調整する場合には、より大きなスケールで大腸菌を培養してからプレップをする必要があります。
そこで、今回のエントリーでは、前回紹介したミニプレップよりも大きなスケールのプレパレーション(ミディプレップ)のプロトコールを紹介したいと思います。

なお、pET系のベクターの場合、サブクローニング用のプラスミドを調整するのでしたら、多くの場合、10~20 mLの培地で十分です。


プラスミドのミディプレップ

ここでは、10mLの培地で培養した大腸菌からプラスミドを調整する際のプロトコールを紹介します。ミディプレップといっても、基本的にはミニプレップをスケールアップしたものですから、ミニプレップのプロトコールを流用することができます。ただし、そのためには最初の方の段階で、少しだけ工夫する必要があります。
さっそく見ていきましょう。


1. 15 mLの遠心管(コーニングチューブなど)に大腸菌の培養液を全量(10 mL)注ぎ、中~大型の遠心機で室温、5, 000 x gで5分遠心し、上清を除く。

2. 600 uLのSol1を大腸菌のペレットに加え、ボルテックスにかけて懸濁したら、150 uLずつ4本のマイクロチューブに分注する。

3. Sol 2をそれぞれのマイクロチューブに300 uL加え、3~5回インバート(チューブを上下に反転すること)する。その後、Sol 3を225 uL加え、数回インバートしたら、軽くボルテックスする。

4. 15,000 rpm、4℃で5~10分遠心する。

5. ピペットマンで上清を回収し、新しいマイクロチューブへ移す。

6. RNase (10mg/mL)を0.5~1 uL加えて軽くボルテックス。スピンダウン*した後、37 ℃で20 分インキュベートする。

*小型の卓上遠心機などで、ほんの数秒遠心して、チューブ内側の側面やフタについた内容物をチューブの底の方へ落とすこと。


7. フェノール/クロロホルム(通称フェノクロ)を400 uL加え、ボルテックスした後、15,000 rpm、室温で5 分遠心する。

ボルテックスは最高強度の振動で30-45秒間くらい。


ここで使用しているフェノクロは平衡化したフェノールに同量のクロロホルムを加えてたものを指す。調整法などはミニプレップのエントリーを参照のこと。


8. 上清を新しいマイクロチューブに移し、イソプロパノールを675 uL加えて数回インバートした後、15,000 rpm、4 ℃で10分遠心する。遠心後、上清を取り除く。

9. 70 %エタノールを800 uL加え、15,000 rpm、4 ℃で5分間遠心する。

10. 上清を取り除いたら、プラスミドDNAのペレットを軽く乾燥させる。

脱気しながら遠心乾燥させても良いし、室温で自然乾燥させても良い。自然乾燥させる場合は、マイクロチューブのフタを開けた状態で逆さまにし、キムタオルの上に置いておく。もしくはマイクロチューブをラックにセットしてからフタをあけ、台所用のラップをふわりとかぶせて10-30分程度放置してもよい。


DNAのペレットはカラカラになるまで乾燥させる必要はない。


サブクローニング用のプラスミドは11へ移行。PEG(ポリエチレングリコール)沈殿する場合は、プラスミドのペレットが乾いたら、下記のPEG沈殿プロトコールへそのまま移行する。(11,12はスキップする)


11. DNAのペレットを20~50 uLのTEに溶かす。

12. 吸光度測定、アガロースゲル電気泳動等を行いプラスミドが取れたか確認したら、-20℃で凍結保存。


ポリエチレングリコール沈殿のプロトコール

(ステップ11からの続き)

1.乾燥させたプラスミドを200 uLのTE or 滅菌MilliQ水に溶解させたら、13 % PEG/1.6 M NaClを200 uL加え、30~60 分間氷上で静置。

ここで使用するPEGの分子量は8000程度 (PEG 8000)のものを用いる。

2. 4 ℃、15,000 rpmで20分間遠心する。その後、上清を取り除く。

3. 70 % EtOHを600 uL加え、4 ℃、15,000 rpmで5分間遠心する。上清を取り除き、乾燥させる。

4. 20~50 uLのTEに溶解する。

5. 吸光度測定、アガロースゲル電気泳動等を行いプラスミドが取れたか確認したら、-20℃で凍結保存。


Appendix

中~大型遠心機の利用に関するTips

プラスミドのプレパレーションのために大腸菌を集菌する際、ミニプレップの場合は培地量が2mL程度ですから、遠心する際には小型の高速遠心機を利用することができます。一方、ミディプレップやそれ以上のスケール(俗に言うマキシプレップなど)などでは、中型から大型の遠心機が必要になってきます。

ここで問題なのは、中型から大型の遠心機はメーカーや機種、ローターの種類などによって同じ回転数でも遠心力が大きく異なってしまうことです。
そのため、プロトコール中の遠心操作では、回転数(rpm)ではなく遠心力(xg)で条件を設定した方が無難と言えます。実際、いくつかの実験書では回転数ではなく、遠心力で条件を記述しています。

最近のマイコン内蔵式の遠心機では回転数だけでなく、遠心力でも条件設定できますし、また、回転数⇔遠心力を容易に変換してくれます。しかし歴史のある研究室では、未だに古い遠心機を使用しているところも少なくなく、そうした場合には、ローターの半径と回転数から遠心力を計算する必要が出てきます。
その際に、容易に遠心力を計算してくれるウェブツールがありますので、以下に紹介しておきます。

1.
http://www.kubotacorp.co.jp/cgi-bin/calc.cgi

2.
http://www.beckmancoulter.com/resourcecenter/labresources/centrifuges/rotorcalc.asp
*Beckman Coulterの遠心機を使用している場合は、こちらが便利です。



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