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Natureのブログを読んでいたら、非常に興味深い記事を見つけたので、今回のエントリーで紹介したいと思います。
Initiative gets $1.3 million to verify findings of 50 high-profile cancer papers

記事によると、
・Laura and John Arnold Foundationから130万ドルの寄附を受けてThe Reproducibility Initiativeが2010〜2012年の間にNatureやScience, Cell, PNAS等に掲載されたがん研究の有名論文50本の再現を試みる。

・検証にあたり、オリジナル論文の著者に連絡を取り、プロトコールのチェックを依頼する等して、適切な検証を実施する。

・検証結果は来年の9月を目処にまとめ、PLoS ONEにて発表する。

とのことです。

このような再現性の検証は、誰しもその意義と重要性を認識していながら、新しい発見をもたらすわけではないため、公的な助成を得られず、実現できなかったものです。それが遂に実現することになったのは、誠実な研究活動に対する認識の高まり(これは研究者倫理の低下が引き金ですが)とアメリカならではの慈善団体の影響力・行動力によるものでしょう。

今回の試みはどのような結果をもたらすのでしょうか。
仮に「再現性無し」と結論づけたとしても、生命科学のウェット実験は結果の不一致をいくらでも言い訳できてしまう部分があり、オリジナル論文の著者らは自分たちは再現できると言い張るのでしょう。(個人的には、著者グループしか再現できない論文に高い価値があるとは思いませんが)
ただ、再現できなかったという事実は新たな視点と可能性を提供するものあり、それを参考として、将来新たな知見がもたらされることは有り得るでしょう。

このプロジェクトは、まだ不明確な部分も多く、論文著者の協力が本当に得られるのか、また、1年そこらで50本の論文をきちんと検証できるのか等、疑問は残りますが、研究者のRCR(Responsible Conduct of Research, 責任ある研究遂行)に対する意識向上には繋がるはずです。
それが論文データの再現性向上に寄与するのであれば、このプロジェクトの意義は十分にあったと言えるのではないでしょうか。