RNase-freeな試薬の調整法

前回のエントリーでは、主に実験器具のRNase-free化について説明しました。そこで今回は、RNase-freeな試薬の調整法について具体的に説明していきたいと思います。

・RNase-free 80 % エタノールの調整法
(500 mL分)

1. 500 mLのメディウムビンと500 mLのメスシリンダーをRNase-free化しておく。

(メディウムビンにはDEPCとオートクレーブによるRNase-free化法、メスシリンダーには過酸化水素を使ったRNase-free化法を使う。詳しくは前回のエントリーを参照)

2. メスシリンダーで100 % エタノール*を400 mL 計る。

3. そこへDEPC水を加えて、500 mLまでメスアップし、RNase-freeにしたメディウムビンに入れる。

4. ビンを穏やかに振って、混ぜたら、4℃で保存。

*実際には、100%ではなく99.5%ですが、これを便宜的に100%エタノールと呼ぶことが多いので、当ブログもそれにならいます。

ポイント
試薬調整の際に、ファンを切ったクリーンベンチ内で作業することで、RNaseがコンタミするリスクを減らすことができます。


・第一級アミンの水溶液の調製法

DEPCは第一級アミンと反応するため、例えばトリスバッファーを直接RNase-free化することはできません。
つまり、調整済みのトリスバッファーにDEPCを添加してRNase-free化することはできないということです。
このような第一級アミンの水溶液をRNase-freeで調整する場合は、予め試薬調整に使用する器具を全てRNase-free化しておき(前回のエントリーを参考にしてください)、DEPC水を使用して調整し、最後にオートクレーブします。なお、pHメーターの電極はDEPC水で洗浄してから使用しましょう。

注)試薬(トリスなど)は必ず分子生物学グレードのものを使用してください。


・第一級アミンではない水溶液のRNase-free化
第一級アミンでない化合物の水溶液は、DEPCが使用できるので比較的容易にRNase-free化することができます。

1.まず、通常の方法(RNase-freeでない、普段の時と同じ方法)で水溶液を調整し、試薬ビンに移す。

2. DEPCを最終濃度0.1%(v/v)になるように加え、よくビンを振ってDEPCを溶かす。

3. 37℃で2時間インキュベートor 室温でオーバーナイトしてから、オートクレーブ(121℃で20 分)。


・オートクレーブできない化合物の水溶液の調整法
MOPSなどオートクレーブできない化合物に関しては、上記した第一級アミンの水溶液の場合と同様に調整してから(オートクレーブの前まで)、ろ過滅菌用フィルターでろ過します。

より詳細な方法に関しては、Molecular Cloning 3rd の7.32などを参考にすると良いでしょう。

まとめ

ここまで、実験器具や試薬のRNase-free化ついて様々な方法を紹介してきました。RNA実験に使用する全ての実験器具と試薬を網羅したわけではありませんが、基本的な方法は紹介しましたので、これらの方法を適宜調整したり、組み合わせたりすることで、ほぼ全ての実験器具と試薬をRNase-free化できると思います。